中抜きのせいにするな。セールインセンティブ削減で誰も説明しない「ブラックボックス」の正体
いよいよ今年もAmazonの夏のセールが近づいてきた。配送現場にとっては、あの爆発的な物量と戦う「地獄の数日間」がまたやってくる。
しかし今、全国のデリバリープロバイダ(デリプロ)を巻き込んで、現場に大きな激震が走っている。
なんと、セール期の過酷な労働を支える唯一のモチベーションであった「セールインセンティブ」が、去年の「半額」、あるいは拠点によっては「完全にゼロ」になるという方針が提示されているのだ。
その一方で、直契約の「Amazon Flex(アマフレ)」側にはインセンティブや割増オファーが出るという。毎日ルートを守り、看板を背負って走っているプロを切り捨てるかのようなこの格差。しかし、プロの視点から言わせてもらえば、このAmazonの計算は配送網の崩壊を招きかねない「致命的な矛盾(机上の空論)」に満ちている。
元から削られたのか、途中で抜かれたのか、すべてはブラックボックス

「デリプロ(会社)にインセンティブを原資として出しても、それが末端のドライバーに還元されず、会社に中抜きされているケースがある。だから、直のFlexに予算を回すのだ」
今回のデリプロ向けセールインセンティブ削減の裏で、Amazon側が使いがちなのがこの「ドライバーファースト」を装った大義名分(建前)だ。一見すると正論のように聞こえるかもしれない。
しかし、現場で毎日ハンドルを握っている末端のドライバーからすれば、これほどずるく、不誠実な言い訳はない。
デリプロという組織を挟んでいる以上、元請け・下請けのパワーバランスの中で、どこでいくら引かれているのか、その正確な数字は末端のドライバーには一切見えない。完全なブラックボックスだ。
今目の前にある提示額は、「プロバイダが抜いた後の半額」なのか。それとも「Amazonが元々プロバイダに出す総額自体を半分に削った」のか。
当事者であるドライバーにその金額の根拠も納得感も与えないまま、結果として「地獄のようなセールの物量を、去年の半額のモチベーションで配らされている」という冷酷な事実だけが現場に突きつけられている。中抜きの有無を盾にして、一番泥をすすっている末端の報酬を買い叩いていい理由には絶対にならない。
結果として、ドライバーの不満は会社側へ向かいやすくなる構造
もちろん、Amazonが本当に「ドライバーの怒りの矛先を、意図的に所属会社(デリプロ)へ向けさせよう」と裏で画策しているかどうか、その真意や内部資料は私たちには分からない。
しかし、現場から見ると、そのように受け取られても不思議ではない歪んだ構造が確実に出来上がっている。
「直のFlexにはしっかりインセンティブを出している」という事実が表面上にあることで、結果として、現場のドライバーたちの不満や疑問は、Amazonではなく「自分たちの所属しているプロバイダ(会社)」へと向かいやすくなる。ドライバーが「会社が抜いているから自分たちの手取りが少ないんだ」と疑心暗鬼になれば、結果的にトップのプラットフォーマーは直接の批判を浴びずに済む形になるのだ。
大義名分を掲げてドライバーの味方のフリをしながら、その裏で一番ずるく全体のコストを削り、セールの莫大な利益(粗利)を総取りしようとしているのは一体誰なのか。
物流の2024年問題を経て、業界全体の適正運賃や待遇改善がどれだけ世間で叫ばれていても、トップのプラットフォーマーがこの不透明な構造を利用して現場を買い叩いているのが現実だ。毎日真面目に走っているプロをシステムの一部(コマ)としてしか見ない不誠実なやり方に、私たちはもう限界を感じている。

