なぜ現場は壊れていくのか?「責任だけ増えて、報酬が変わらない」構造の正体
「配達は、終わっていますか?」ある日、デポの管理者から連絡が入りました。「最後に配達した荷物が、宅配ボックスに入っていない可能性があるので、確認に行ってもらえませんか?」
ドライバーはすでに業務終了後。そして、こう聞いたそうです。「それは…お金は発生しますか?」返ってきた答えはシンプルでした。
「発生しません。担当した荷物なので、確認は義務です」
違和感の正体
このやりとり、どこかおかしいと思いませんか?
- 誤配が”確定”しているわけではない
- あくまで「かもしれない」
- それでも業務外で対応
- しかも無償
もちろん、責任として確認に行くべきという考えも理解できます。しかし、同時に、こうも思うのです。🤛「なぜ全てが当たり前のように個人に乗るのか?」

ロジー、これって普通なのかな…

責任としては、自然な行動ですが、構造としては、少し歪みがあります

歪み?

責任とコストが分離されていません
構造の分解
今の配送の構造はシンプルです。
- 上位:システムと要求
- 中間:管理・調整
- 現場:実行
しかし、実際はどうなっているか調整が機能していない
実際に起きていること
- 荷物量は増え続ける
- ルートは過密になる
- 再配達は減らない
- それでも報酬は据え置き
そして何か問題が起きた時、すべて現場で吸収される

でも、中間も大変なんじゃないの?板挟みってよく言うし…

確かに”そう感じる”構造ではあります

じゃあ、やっぱり仕方ない?

いいえ。重要なのは”感じ方”ではなく”流れ”です

流れ?

負荷がどこで止まるか。です
板挟みという言葉の正体、よく言われる「中間は板挟み」という言葉。
- 上には言えない
- 下には言える
結果どうなるか?
負荷は一方向に流れる

結局、全部ドライバーに来ているってことか…

はい。調整がなければ、負荷は最終地点に集まります

それって…

構造的には”自然な結果”です
そして、起きる変化
この状態が続くと、現場では変化が起きます。
- 「お金は発生しますか?」と聞くようになる
- 無償対応に疑問を持つ
- 責任と対価のズレを感じる
これは、甘えではありません。構造に対する正常な反応です
危険なサイン
「今のドライバーは人間以下だ」この言葉は極端です。
しかし、同時に、こうも考えられます
これほどまでに過激な言葉が飛び交うのは、現場の実情が無視され、物理的にも心理的にも「現場との距離」が絶望的なまでに広がっている証拠ではないでしょうか。

なんで…そんな言葉が出るんだろう….

人を”処理能力”としてみる環境では、言葉も変わります

でも、それっておかしいよね?

はい。本来守るべき対象が消えています
本当の問題
核心はシンプルです。運ぶ荷物と背負う責任だけが積み上がり、手元に残る対価は変わらない。そして、これからこのまま進めばどうなるか
- 現場は疲弊する
- 品質は落ちる
- 不信感が広がる
そして最終的に”人”がいなくなる

じゃあ、どうすればいいの?

すべてを変える必要はありません

えっ?

”責任とコストを分ける”だけで改善は始まります
小さな改善の方向
例えば
🔳「確定条件」と「可能性」を分ける
「〜であるかもしれない」という不確かな荷物のために、現場を拘束してはいけません。確定した仕事と、予測段階の情報を明確に区別し、不確定な要素には別途「待機料」などのルールを設けるべきです。今の現場では、この「可能性」のために、自分の人生や家族との時間を削って待機させられることが、あまりに当たり前になりすぎています、
🔳業務時間内外の線引きを明確にする
「仕事」と「休憩」の境界が曖昧なままでは、現場の疲弊は止まりません。荷待ちや事務作業、急な電話対応など、実態として拘束されている時間はすべて「業務時間」としてカウントし、正当な対価を支払うべきです。「少しだけなら」「ついでだから」という言葉で、ドライバーの貴重なプライベートが際限なく侵食されている現状を、根本から変えていく必要があります。
🔳無償対応の範囲を定義する
「サービス」という言葉で、本来は有料であるべき付帯作業や無理な要望を現場に押し付けてはいけません。どこまでが契約範囲で、どこからが追加費用なのかを明確にルール化し、現場の「タダ働き」をゼロにするべきです。ドライバーの善意や「断りにくい立場」に甘え、無償で労働力を搾取し続ける構造は、プロ同士の対等なビジネスとは呼べません。
🔳「個人の責任」ではなく「仕組み」で解決する
ミスやトラブルの責任を、現場を走る個人だけに押し付けるのはもう終わりにしましょう。無理な配分や情報の不備といった「仕組みの欠陥」を放置したまま、全てをドライバーの自己責任にするのはあまりに酷です。「何かあったらドライバーのせい」という突き放しが、プロとしての誇りを削り、この仕事を続けられなくさせる原因であることを、関わる全員が自覚すべきです。
これだけでも、構造は変わります
結論
この現状は、一人のせいではなく、変えようとしない仕組みの問題です。
今、現場が回っているのは、ドライバーひとり一人の善意があるからこそ。
しかし、その「優しさ」に頼り切った運営は、もうすぐ限界を迎えます。
善意で回る仕組みは、いつか必ず止まります。そうなる前に、誰もが無理なく働ける「本当の仕組み」が必要です。
Logi Compass will continue to explore the structure behind logistics — where responsibility increases, but compensation does not.
物流の裏側にある「構造」を、これからも見つめていく。
責任だけが増え、報酬が変わらない――その歪みの正体を。
