第3回:「1回目の不在でも100%支給」の絶対的正当性〜GPSの盾で、再配達のコストを正しく見える化する〜
毎日、朝早くから夜遅くまで、重い荷物を抱えて階段を駆け上がったり, タワマンの長い廊下を往復したりしての配達、本当にお疲れ様です。
前回は「日当制」という安心の皮をかぶった仕組みの裏にある、頑張るドライバーほど報酬が伸びず、物量だけが増えて報われにくくなってしまう罠についてお話ししました。
「やった分だけ自分の売上になる『1個単価』の方が、プロとして対等だし、絶対にいいよね」
そう納得していただけたかと思いますが、同時に、全ドライバーの頭に共通して浮かぶ、大きな不安である「あの問題」の存在がありますよね。
そうです。「不在(持ち戻り)」です。
「1個単価にしたって、せっかく汗水たらして、ガソリンを使って、やっとの思いで現地まで行ったのに、インターホンを押したら留守だった。不在だから売上は0円……そんなのただのボランティアじゃないか。やっぱり1個単価は怖すぎるよ」
この不条理を前に、数え切れないほどのドライバーが心を折られてきました。しかし、本当に「不在=0円」は仕方のないルールなのでしょうか?
今回は、現地に足を運んだプロの労働コストの真実と、今まで誰も言わなかった「日本の再配達という構造を根底から変えていくための、まったく新しい配送アプリのロジック」について、やさしく深く、お話ししていきたいと思います。

1. 現地に行ったプロに「0円」はおかしい。不在100%支給の正当性
まず、根本的なビジネスの原則に立ち返ってみましょう。
私たちは、単に「手渡しできたかどうか」だけで評価される作業をしているわけではありません。プロの個人事業主として、自分の時間、運転の技術、あるいはガソリン代という「移動・労働のコスト」を、その玄関先まで確実に提供したはずです。
それなのに、結果が不在だったからといって、私たちが流した汗も、使ったガソリンも、すべて「なかったこと(0円)」にされる。これ、冷静に考えておかしくないですか?
お客様が不在だったこと自体は、少なくともドライバー個人が一方的に背負うべき責任ではありません。それなのに、現行の仕組みの中では、現地まで行った移動コスト・時間コスト・労働コストが、結果としてドライバー側に丸ごと残されてしまいます。
不在のリスク(損失)だけを一番立場の弱い現場の自己負担として見えなくしている。これこそが、今のグレーゾーンの大きなバグなんです。
だからこそ、私たちが手に入れるべき本当のルールはこうです。
「現地に到着し、インターホンを押し、不在通知を送るという『配送を試みたプロの物理的な労働』に対しては、1回目の訪問であっても100%の単価が支払われるべきである」
もちろん、その荷物を夜に2回目、3回目と再配達して完了した時には、また新しく別の移動・労働コストとして正当に扱われるべきです。なぜなら、2回目はまた新しく別のコストをかけて現地に行っているからです。
これこそが、リスクを背負って軽バンを用意した独立した事業者に対する、最低限のフェアな敬意であり、当然支払われるべきコスト補填です。
2. 不正な不在処理を防ぐ、GPSの滞在ログ
しかし、この「不在でも100%お金を払う」という提案をすると、仕組みの側や外側からは必ずこんな反論が飛んできます。
「そんなことをしたら、現地に行かずに『不在ボタン』だけを押して、不当に報酬を得る人が出るに決まっているだろ!」
現場の良心だけに頼れば、不正を疑う声が出るのも当然です。だからこそ、感情ではなくデータで証明する仕組みが必要になります。ここで配送アプリの誇る「GPSテクノロジー」の出番です。
たとえば、配達先付近に一定時間滞在したGPSログが残っている場合にだけ、不在処理ができる仕組みにする。正確なデータがアプリに記録されない限り、画面の『不在ボタン』が押せないロジックをシステムでロックするのです。
考えてみてください。今までのアプリのGPSは、「お前、サボってないだろうな」と, 人間を監視してコントロールするための「矛(ほこ)」として使われがちでした。
使い方の向きを180度変えるんです。

これからは、「俺は間違いなく、指定された時間に、指定された場所に車を停めて、システムのルール通りに完璧に仕事をこなしたぞ」という、ドライバー側の身の潔白をデータで100%証明する『最強の盾(たて)』として、私たちが自ら進んでGPSのログを活用するのです。
システムに沿って動くというプロの義務をこちらが100%受け入れる代わりに、嘘の不在処理が入る余地をシステムで限りなく小さくする。そうすれば、企業側も「ドライバーが不正をするかもしれないから、不在にはお金を払えない」という反論の余地を、かなり小さくできます。
3. コストの矢印を正しく向ければ、日本の「再配達問題」は変わる
なぜ、これまで日本で「再配達問題」がこれほど騒がれているのに、一向になくならなかったのでしょうか。
理由はシンプルです。不在によって生まれるコストが、結果として一番立場の弱い現場に丸投げされ、ドライバーの自己負担として見えなくされてきたからです。
現地まで行った時間。
そこで使ったガソリン。
インターホンを押し、不在処理をし、次の荷物へ向かうまでの労働。
それらが「不在だから0円」として扱われる限り、社会はそのコストを本気で見ようとしません。だから、「再配達は無料で当たり前」という感覚が続いてしまうのです。その裏で、現地まで行ったドライバーの時間とガソリン代だけが、静かに削られてきました。
ここで見落としてはいけないのは、「再配達を有料化すれば解決する」という話だけが先に進んでしまう危うさです。
もし受け取り側から追加料金を取るのであれば、その前にまず、1回目の不在で現地まで行ったドライバーの労働コストが、きちんと報酬として認められているのかを問わなければなりません。
ドライバーの1回目の労働を0円のままにして、再配達料金だけを社会に求めるのだとしたら、それは不在問題の解決ではなく、単なる「コストの付け替え」にすぎません。

これは、昨日今日始まった小さな不満ではありません。不在1回目が0円として扱われることへの違和感は、長いあいだ多くのドライバーの中にありました。けれど、個人事業主という立場の弱さや、仕事を失う不安の中で、それを大きな声にしてこられなかっただけです。
水面下では、ずっと「これはおかしい」と言われ続けてきた。その沈黙の上に、今の再配達の便利さが成り立ってきたのだとしたら、まず見直すべきなのは、再配達料金を誰から取るかではなく、1回目に現地まで行ったドライバーの労働を0円にしてきた仕組みそのものです。
もし、不在でもドライバーに100%の単価が支払われるようになったら、仕組みの側は不在を出せば出すほど自社のコストとしてダイレクトに跳ね返るため、本気で不在を減らすためのアプリのロジックや、受け取り側が無理なく不在を減らせる設計に投資せざるを得なくなります。
ドライバーに不在手当を100%払うことは、単なるドライバー救済のワガママではありません。これは、長いあいだ現場の身銭と沈黙の中に押し込められてきたコストを、ようやく正しい場所に戻すための話です。不在という社会的コストを初めて正しく見える化し、これまでの構造の矛盾と真っ正面から向き合うための、唯一のスタートラインなのです。
4. 不在票の手間を減らす:デジタル不在通知へ
不在の何がキツいって、あの小さな紙の不在票に、雨の日も風の日も、汗だくになりながら手書きで「何時何分、〇〇が預かっています……」と書く時間ですよね。ただでさえ売上が反映されなくて心が折れそうなのに、あの手書きの作業を1日に何十枚もやらされる。これがプロの貴重な時間を奪う、最大の無駄な足し算です。
これもアプリの力で「引き算」しましょう。
GPSで現地滞在のログ(証拠)が確認されたら、ドライバーがアプリを1タップするだけで、お客様のスマホへ「いま伺いましたが不在でした。再配達のご依頼はアプリからお願いします」と、瞬時にデジタルで不在通知が飛ぶ仕様にする。
過剰な手書きサービスに振り回される必要はありません。システムに沿ってやるべき物理的な仕事を完璧にこなしたら、手間のコストはゼロにして、私たちは軽バンのギヤを入れ直し、次の配達へスムーズに進めるようにするべきなのです。
⏭️ 次回予告:不正な不在処理を、通話データでさらに防ぐ
「現地に行ったログが残るなら、家の前に車を停めて、すぐ不在処理をする人が出るのでは?」
外側の声は、まだまだ諦めずにそんな抜け道の疑いをかけてくるかもしれません。
安心してください。そうした不安に対して、さらにシステムで不正を防ぐ仕組みが、すでに用意されています。
次回、第4回。
『【不正を防ぐ】「架電データ連動」と自動デジタル不在通知の全貌』
お客様と本当に通信したデータが残らなければ、不在処理には進めない。
ドライバーが誇り高く「フェアなプロ」であり続けるための、不正を封じるロジックへ、次回突入します。
コンパスの針は、もうブレません。
また次回の記事で、お会いしましょう。
