G-JCD6BP9HDW 物流崩壊なのになぜドライバーになる?2024年問題と配送雇用のリアル
宅配の現場

物流崩壊が叫ばれる今、なぜ「ドライバー」という道を選ぶ人がいるのか?

物流崩壊をテーマに、配達ドライバーが都市と配送車を背景に立ち、AI配送アプリ・構造的な罠・人材の入れ替わりといった現場課題を図解で示したアイキャッチ画像。
logicompass528@gmail.com

「2024年問題」が連日ニュースを賑わせ、現場の過酷さや収益性の低さがこれほどまで可視化されている今、世間の皆様は不思議に思っているのではないでしょうか。

「これだけ破綻していると言われている業界に、なぜわざわざ入る人がいるのか」「なぜ、今ハンドルを握っている人たちはいなくならないのか?」

そこには、美談だけでは語れない「現代の物流構造」と。私自身の経験を含めた「切実なリアル」があります

「誰でもできる」という救いと罠

かつて、運送業は「地図を丸暗記し、超人的なスピードで駆け回る」という、一握りのセンスと体力を備えた職人技の世界でした。しかし、その壁をデジタルが壊しました。

AIが最適なルートを引き、スマホが次に配る荷物を指示してくれる。Amazonが掲げた「誰でもできる」というスローガンは、私のような「配達のセンスは期待できないけれど、運転は好きだ」という層にとって、大きな入り口になったのは事実です。

私自身、佐川急便という「THE・職人」の世界から一度離れ、数年のブランクを経てAmazonのラストワンマイルに戻ってきた一人です。もし、あの頃のような「センスの競い合い」だけだったら、私は戻ってこなかったかもしれません。「自分でもできるかもしれない」と思わせる標準化が、現場の担い手をかろうじて繋ぎ止めているのです。

ライフスタイルが規定する「消去法」の選択

なぜ、それでも人が残るのか。その背景には、今の日本のライフスタイルの変化が密接に関わっています。

今のラストワンマイルを支えているのは、主に独身層家計を補い合う共働き層です。拘束時間が長く、収入が不安定になりやすいこの仕事は、一人の稼ぎで家族全員を養う「昭和のモデル」では維持できません。

自分の時間をすべて仕事に投じられる、あるいは世帯全体で帳尻を合わせられる。そんなライフスタイルを持つ人々が、消去法的に、あるいは適応して現場を支えているのが実態です。

「選べない」という業界の閉塞感

コンビニでバイトを探すなら、「あっちの店のほうが時給がいい」「あそこのオーナーは話がわかる」と比較して選ぶことができます。しかし、ラストワンマイルのドライバーには、その「選ぶ自由」が、ほとんどありません。

間にプロバイダーを挟む構造上、どの窓口から入っても条件は、ほぼ横並び。均一化されています。努力やスキルが直接的な報酬の差につながりにくく、より良い条件そ求めて他へ移るメリットも薄い。

この「どこへ行っても同じ」という硬直した構造が、皮肉にも「そこにとどまるしかない」という状況を生んでいます。

「人がいる」のではなく「人が入れ替わっている」だけ

世間は「ドライバーがいなくならない」と思っていますが、現場の景色は違います。実際には、凄まじいスピードで人が入れ替わっている(消費されている)だけなのです。

「誰でもできる」という間口の広さに惹かれて入ってきたものの、現場の過酷さと報酬の不均衡を目の当たりにし、短期間で去っていく。そして、一度この業界に絶望して離れた人が戻ってくるケースは極めて稀です。

今、物流が回っているのは「定着」しているからではなく、絶え間ない「穴埋め」が続いているからにすぎません。

善意とシステムに甘える限界

「誰でもできる」というシステムへの依存、特定のライフスタイル層の献身、そして選ぶ自由のない構造。今の物流は、こうした危ういバランスの上に成り立つ「砂上の楼閣」です。

私のように「運転が好きだ」という純粋な動機を持つ人間が、安全運転というポリシーを守りながら、無理なく働き続けられる。そんな当たり前の選択肢が保証されない限り、この砂の城はいずれ崩壊します。

「まだ人がいるから大丈夫」ではなく、「なぜ、彼らはそこにいなければならないのか」を問い直すこと。それが、物流の未来を照らす唯一の指針(コンパス)になると私は信じています。

Logi Compass — Navigating the Truth of Logistics —

物流の裏側にある構造を、これからも見つめていく。 責任だけが増え続け、報酬が変わらない。 その歪みの正体に、私たちは向き合い続けます。

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橘 ユウト
橘 ユウト
AIと現場から物流を再設計する配達員|橘ユウト
現役ラストワンマイル配達員「橘ユウト」と、物流を観察するAIロボット「ロジー」で運営するブログ。 現場の視点とAIの視点から、日本の配達の「当たり前」を少しだけ見直しています。
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