第2回:日当制の闇と「1個単価」の本当の意味〜なぜ保証給は、頑張る人ほど損をする仕組みなのか〜
毎日、相棒である軽バンのハンドルを握り、狭い路地を何度も往復しながらの配達、本当にお疲れ様です。
前回は、私たちが本当に「個人事業主」なのかという、グレーゾーンの正体についてお話ししました。
「アプリを監視の『矛』ではなく、自分たちを守る『盾』に変えていこう」
そうお伝えしましたが、では、私たちが最初に手を入れるべき“盾”とは一体何でしょうか。それは、毎日の生活に直結する「報酬の設計」です。
求人サイトやSNSの募集要項を見ていると、こんな魅力的な言葉が嫌でも目に入ってきますよね。
「日当1万8000円保証!未経験でも安心!」
「荷物が少なくても固定でもらえるから、最初のうちは日当制がおすすめ!」
一見すると、まだ仕事に慣れていないドライバーを優しく守ってくれる、素晴らしい仕組みのように思えます。実際に「これなら安心だな」と思ってこの世界に飛び込んだ方も多いはずです。
でも、数ヶ月、半年と走っているうちに、ふとこんな違和感を抱いたことはありませんか?
「配れる個数は確実に増えているのに、なぜか手取りが1円も増えない……」
「むしろ『あいつはデキる』と評価された結果、どんどん荷物だけが増えて、帰りが遅くなっている気がする……」
その違和感、大正解です。

今回は、この「日当保証」という言葉に隠された冷酷な仕組みの裏側と、私たちが独立したプロの商売人として「なぜ1個単価でなければならないのか」について、現場の知られざるリアルを含めてやさしくお話ししていきたいと思います。
1. 新人時代の焦りと、ベテランが「超特急」で配る本当の理由
この仕事を始めたばかりの「新人の頃」を思い出してみてください。
最初は右も左もわからないし、地元の細かい地理やマンションの入り口だってわかりません。荷物の個数が60個、80個、100個と上がっていくにつれて、「時間内に配り切れるだろうか」という焦りばかりが先走ります。無駄な動きも多くなり、結果として休憩も満足に取れないまま、夜遅くにヘトヘトになってデポに戻る……そんな毎日だったはずです。
しかし、数ヶ月経って仕事に「慣れ」てくると、ドライバーの動きはガラリと変わります。
無駄な動きが消え、驚くほど早く配れるようになる。では、なぜドライバーたちは、慣れてくるとそこまで必死に「早く配り終えよう」とするのでしょうか?
「早く終わらせて、家でゆっくり休みたいから」
……いいえ、違いますよね。
日当制のままだと、どれだけ配達スキルが上がっても、その上達が売上に反映されにくい。だから人によっては、空いた時間で別の仕事を入れたり、少しでもトータルの収入を補おうと考えるようになります。
しかしその結果、配達中の意識が「1件1件を丁寧に届けること」よりも、「とにかく早く終わらせること」に寄ってしまうことがあります。これは、現場全体の配送品質を下げてしまう一因にもなり得ます。誰も、悪気があって雑にやっているわけではありません。そうせざるを得ない仕組みが、裏にあるのです。
2. 頑張った人がペナルティを受ける理不尽
こうして、必死に早く配っている優秀なドライバーの姿を見て、仕組みの側から見ると、どう判断されやすくなるでしょうか。
「この人はまだ余力がある」と見なされ、次の日からは120個、150個と、限界まで荷物がどんどん上乗せ(増量)されていきます。もちろん、何個荷物が増えたところで、あなたに支払われる日当は一律のままです。仕組みの側からすれば、どれだけ荷物を詰め込んでも定額で使い回せる、都合のいい状態になってしまうからです。

つまり、頑張ったプロほど損をする。
しかし、この仕組みの本当に理不尽なポイントは、ここからです。
ある日、大雨が降ったり、大規模な渋滞に巻き込まれたり、あるいは体力の限界を迎えて、その「限界まで増やされた荷物」をどうしても配り切れなくなってしまったとします。
「もうこれ以上は頑張れない……」とパンクして荷物をデポに持ち戻した瞬間、手のひらを返したように「未配」としての厳しい評価やペナルティが課されてしまう。
おかしいと思いませんか?
頑張って早く配れるようになったから荷物を押し付けられ、その押し付けられた理不尽な物量に対して、たった1回対応できなかっただけで、冷酷に責められる。
これこそが、頑張ったプロが一番バカを見て、心も体もすり潰されていく「日当制の闇」の正体です。このループの中にいる限り、ドライバーは「言われた通りに動くしかない」と、考える余裕を奪われていくのです。
3. なぜ私たちはプロとして「1個単価」を選ぶべきなのか
では、私たちが目指すべき本来の形である「1個単価」に目を向けてみましょう。
たとえば、あくまで考え方を説明するための仮の数字として、荷物1個あたりの配達単価を「250円」としてみます。
- 100個配ったら、その日の売上は 2万5000円
- 頑張って150個配ったら、その日の売上は 3万7500円

「やったらやった分だけ、ダイレクトに自分の売上として跳ね返ってくる」
これなら、わざわざ別の仕事を掛け持ちして焦って走る必要なんてどこにもありません。目の前の荷物だけに100%集中して、丁寧にお客様に届ければ、それだけで安全に「売上の青天井」が狙えるのです。現場の配送品質も、自然と上がっていくはずです。
空間と時間をフルに使った1個単価の本当のメリットは、単に「稼げる」ということだけではありません。企業との関係を「対等」にするための絶対の盾になる、ということです。
1個単価になると、企業側は「このドライバーに無理やり荷物を押し付けたら、その分だけ自分たちが払うコストが跳ね上がる」という計算になります。だから、ドライバーを「定額で使い潰せる存在」として雑に扱うことができなくなります。荷物を残されたくなければ、企業側もそれ相応のフェアな環境を用意せざるを得なくなる。
ここで初めて、私たちは一方的に使われる側ではなく、対等なビジネスパートナーとして企業と会話ができるようになるのです。
4. 「それだと、ハズレコースを引いたら生活が壊れるじゃん」という不安
しかし、こうして「1個単価にすべきだ!」という話をすると、現場のドライバーからは必ずこんな不安の声が返ってきます。
「そんなの、配りやすい平地を引いた奴だけがボロ儲けして、山奥やタワマンに行かされたら移動ばかりで数が配れず、大赤字になるじゃん」
「毎朝デポに行って、管理者からどんなハズレコースを押し付けられるかの『コースガチャ』で生活が決まるなんて、怖くてやってられないよ」
その心配、まったくその通りです。
今の割り当て仕組みのままで単に1個単価にしてしまえば、それはただの不平等なギャンブルになってしまいます。
だからこそ、私たちがこれから「Logi Compass」で提案していく未来は、単に単価の計算方法を変えるだけではありません。
「そもそも、会社やAIにコースを勝手に割り当てさせるのをやめる」という、さらに根本から不公平を減らす仕組みとして、「マイ・コース自己登録制」もセットで考えています。これについては、これからの連載でじっくりとお話ししていきますので、どうか安心してくださいね。

⏭️ 次回予告:一番の恐怖である「不在」を、GPSの盾で守る
1個単価にしたときに、全ドライバーが共通して抱く最大の恐怖。
それが「不在(持ち戻り)」ですよね。
「せっかく汗を流して、ガソリンを使って現地まで行ったのに、不在だから0円。ただのボランティアじゃないか……」
この不条理を前に、誰もが心を折られてきました。しかし、プロが現地に行って自分の技術と移動コスト(労働)を提供した以上、不在だろうが何だろうが、対価が支払われないのは絶対におかしいのです。
次回、第3回。
『「1回目の不在でも100%支給」の絶対的正当性。GPSの盾で不在リスクを可視化する』
「不在でも100%お金をもらう。その代わり、嘘の不在処理が入り込む余地も、システムで限りなく小さくする」という、ドライバー側にも企業側にも筋が通る、フェアなロジックを公開します。
もう、頑張った人が損をする日当制の闇に付き合うのは終わりにしませんか?
あなたの軽バンの助手席に、いつもこのコンパスを。
また次回の記事で、お会いしましょう。
