G-9RQD6QXHG0 毎日走れないFlexを優遇?Amazon夏のセールでデリプロを兵糧攻めにする致命的な矛盾|ロジコンパス
物流の構造
PR

毎日走れないFlexを優遇?Amazon「夏のセール」でデリプロを兵糧攻めにする致命的な矛盾

夕日に照らされた物流倉庫の前で、大量に積まれた段ボールを前に軽貨物ドライバーが呆然と立ち尽くしている様子。セール期の爆発的な物量と、現場ドライバーにのしかかる負担を象徴している。
logicompass528@gmail.com
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

いよいよ今年もAmazonの夏のセールが近づいてきた。配送現場にとっては、あの爆発的な物量と戦う「地獄の数日間」がまたやってくる。

しかし今、全国のデリバリープロバイダ(デリプロ)を巻き込んで、現場に大きな激震が走っている。

なんと、セール期の過酷な労働を支える唯一のモチベーションであった「セールインセンティブ」が、去年の「半額」、あるいは拠点によっては「完全にゼロ」になるという方針が提示されているのだ。

その一方で、直契約の「Amazon Flex(アマフレ)」側にはインセンティブや割増オファーが出るという。毎日ルートを守り、看板を背負って走っているプロを切り捨てるかのようなこの格差。しかし、プロの視点から言わせてもらえば、このAmazonの計算は配送網の崩壊を招きかねない「致命的な矛盾(机上の空論)」に満ちている。

週の時間制限があるFlexだけでは、絶対にセールは回らない

夏の大型セールによる爆発的な荷物量をテーマにした比較イラスト。中央には大量の段ボールが山積みになり、「爆発的な物量」と書かれた看板が立つ。左側には不定期に稼働するスポットドライバーたちが不安そうにスマートフォンを確認しながら集まっており、暗い空が広がる。右側には整列した配送車両と腕を組んだプロドライバーが描かれ、安定した配送体制を象徴する明るい青空が広がる。セール期の物流を支える上で、スポット稼働と継続的なプロ配送網の違いを対比的に表現したイラスト。

Amazon側の思惑としては、「デリプロの予算を削っても、直のFlex側にお金を積んでギグワーカーを爆発的に集めればセールは乗り切れる」という計算なのだろう。

だが、自ら作った配送システムを本当によく見てほしい。 Amazon Flexには、システム上で「週の稼働時間の上限(週50時間など)」という厳しい制限がかけられている。どれだけやる気があり、どれだけセールの売上を支えたくても、Flexだけで「週6日フル稼働して、1本で家族を養う」ような働き方はシステム的に不可能なのだ。

ここで現場を知らない人間は「だったらFlexの登録人数を増やして、シフトを細かく分ければ補えるのではないか?」と思うかもしれない。

しかし、現実の物流はそんな単純な足し算では動かない。 Flexはあくまで副業や空き時間稼働のドライバーが中心であり、セールの超過酷な期間に『毎日同じエリアを確実に走る人材』を、狙い通り大量に確保できる保証などどこにもないのだ。

セール期間に必要なのは、単なる「名前だけの登録人数」ではない。『毎日決まった時間に、決まった台数が、確実に現場へ現れること』だ。 物流の世界においては、登録者数という見かけの数字よりも、実際に動く「稼働率と確実性」の方が遥かに重要なのだ。

誰がいつ入るか分からない、ギャンブルのような流動的プロバイダに、セールの命運をすべて丸投げする。このシステム的な矛盾に、なぜAmazonの上層部は気づかないのだろうか。

命綱を自ら切る、プラットフォーマーの限界

Amazonがラストワンマイルの命綱として選んだのは、毎日決まった時間に、決まった台数を、確実に用意してくれる「デリプロという組織」のはずだ。

毎日同じエリアを走り、見通しの悪い交差点ではしっかり一時停止し、マンションの細かいルールや地域の特性まで熟知して誤配なく配り切る――。こうした通常期からのデリプロの「プロとしての規律と安定性」に依存しておきながら、セールの時だけ美味しいオファーでFlexを優遇し、デリプロを兵糧攻めにする。

こんな理不尽を押し付けられれば、現場の優秀なプロたちが愛想を尽かし、ヤマト運輸の「EAZY」や佐川急便の委託、あるいはBtoBの企業間配送など、よりリスペクトのある他社案件へ流れていくのは目に見えている。

通常期すら毎日走ってくれるプロがいなくなったとき、本当に困るのはAmazon自身のはずだ。目先のコストカットの数字に目を奪われ、物流の土台である「毎日の継続性」を自ら破壊しているAmazonの姿勢に、現場は冷ややかな視線を送っている。

続編はこちら
中抜きのせいにするな。セールインセンティブ削減で誰も説明しない「ブラックボックス」の正体
中抜きのせいにするな。セールインセンティブ削減で誰も説明しない「ブラックボックス」の正体
ABOUT ME
橘 ユウト
橘 ユウト
AIと現場から物流を再設計する配達員|橘ユウト
現役ラストワンマイル配達員「橘ユウト」と、物流を観察するAIロボット「ロジー」で運営するブログ。 現場の視点とAIの視点から、日本の配達の「当たり前」を少しだけ見直しています。
記事URLをコピーしました